Permanent of Entry #1850
フィギュアスケート女子 2019-2020 シーズンの前半が終わって、エテリ・トゥトベリーゼコーチ門下でシニアデビューしたばかりのロシア新星3選手、アリョーナ・コストルナヤ、アレクサンドラ・トゥルソワ、アンナ・シェルバコワの圧倒的な強さが際立った。
GPシリーズ6戦全てを3人で制覇、ファイナルも表彰台を3人で占めたというミラクルな結果を出しているが、大会期間中守りに入ることは一切なく、常に攻め続ける姿勢で試合毎に3人の演技構成の難度は上がっていき、何度も世界記録が更新された。
4回転ジャンパーのトゥルソワとシェルバコワはファイナルのフリーで女子初の4Fにも挑戦し、トゥルソワが見事に着氷。未踏のジャンプを成功させてフィギュアスケートの水準を押し上げている。またトゥルソワはショートに初めて3Aを導入し、シーズンの終わりまでに5種類の4回転ジャンプの中で唯一跳べていない4Loにも挑むつもりでいる。底知れない意欲の塊だ。
完成度の高さに定評のあるコストルナヤは今季から3Aを装備して安定して繰り出している。ファイナルの配信(放送)から取り入れられたISU公認のジャンプ計測システム"ice:stats"の表示のおかげで、ジャンプの高さ、飛距離、着氷速度などの数値が具体的に分かるようになり、コストルナヤの3Aは4回転ジャンプ並の高さがあることが判明した。この事実から推測すると、いずれ4回転も習得して跳んできそうだ。
歴史を塗り替え続けて、衰えることのない3人の向上精神。いつでも本番は110%を出し切るという師の教えに従う。今季からシニア女子の世界が凄くなることは想定済みだったけど、まさかこれほどまでとは…今、世界記録を保持するコストルナヤ含め怪物3人がより一層の怪物化に向けてパワーアップし続けている現状には驚きしかない。
女子はジュニア時代に跳べていたジャンプがシニアに上がると身長の伸びや体型変動で跳べなくなるといった巷の噂が嘘のように聞こえてくる。少なくとも今3人には、スランプに陥りそうな兆しはまったく見えない。
Косторная, Щербакова, Трусова и Загитова в финале Гран-при: что осталось за кадром
ロシアの選手コストルナヤ、シェルバコワ、トゥルソワ、ザギトワをクローズアップした ISU Grand Prix Final 2019 の舞台裏。
容赦なくどんどん難度を上げていくシニア勢とは逆に、同門ジュニアのカミーラ・ワリエワがジュニアGPファイナルで印象深い戦い方をした。
ジュニア界の頂上はGP2連勝のアメリカのアリサ・リウと、同じくGP2連勝のロシアのワリエワの2人が戦闘力の高さで飛び抜けてる存在。ファイナルで2人の直接対決は大注目だったが、ショートプログラムをリウが首位発進でリードして迎えるフリースケーティング、ワリエワはフリーのプログラムから4回転を無しにするという驚くべき手法を取った。
リウが3Aを2本、4Lzを2本という超難度構成に対し、ワリエワはまさかの4回転無し。プロトコルを参照すると基礎点では14点も差がある。
ワリエワは最初のGP大会で4Tを1本、次のGP大会では4Tを2本入れているので、この流れで考えるとファイナルはてっきり4回転を2本以上は入れる構成だろうと予想していた。ところが試合前に出される計画表を見ると4回転が無くなっていた。
嘘だろうと思った。もし何かの間違いでないとしたら、打つ手が無くなって匙を投げたのかとも思った。
だが決して勝負を捨てたわけではなかった。普通に数値だけで考えると勝算は低いのだが、失敗のリスクが高い4回転は封印し、その分本来の持ち味を存分に生かして伸び伸びと誰もできない超絶技巧を美しさで包んだような神秘的なスケーティングをノーミスで実行する。
スピードに乗って滑走、バレエテイストを彷彿させる優美さで滑らかにダイナミックに氷上を舞う。ワリエワのジャンプはタノが多い。今やタノで跳んでも加点されなくなったけど、そんなことは関係なく後半はタノの応酬。魂が揺さぶられるようにワリエワワールドに引き込まれていく。
先行で「本当に美しいスケートをやっているのは誰か」と突き付けたような演技を魅せた。アメージング!私の中ではワリエワのスケートの美しさは、ジュニア・シニア全て見渡して最も美しい。
結果的に、後行のリウにはミスが出て、また予て方々から回転不足気味と言われていた通りに2つの4Lzと1つの3Aでアンダーローテーションが取られ、GOEが低くなり得点は伸びず、見事にワリエワの逆転優勝となった。
元々ジャンプ以外でも高い技術を持ち、広い関節可動域から打ち出される唯一無二の優雅でスケールの大きいスケーティングをするワリエワは、4回転には固執しない戦い方で勝利を掴むことができるということを示した。
Kamila Valieva (RUS) Free Skating - ISU Junior GP Final Torino 2019
ノンフィクションは想像もしていなかったようなことが起きるので面白い。
最後に一つ驚くべき旬な話題を追加すると、ロシアのエリザベータ・トゥクタミシェワが22歳を過ぎてから4回転を習得、練習で4回転のコンビネーションを跳ぶ動画まで出てきた。この年齢で実現するということは、これまでの常識では有り得なかった出来事だ。
まもなく注目のロシア選手権が始まるが、トゥクタミシェワから、ロシア選手権の観客にサプライズを準備しているというメッセージが公表された。何が起こるのか、とても楽しみである。
これからのフィギュアの展開も益々目が離せない。
Last Updated: Wed, 2019-12-25 06:20:53
- Entrylinks:
- Related Entries
-
- 活動量計を使い始めてみた 2012-09-06
- Merry Christmas & Happy New Year 2016 2015-12-17
- Happy New Year 2011 2011-01-02
- フィギュアスケート女子が今シーズンも面白い展開をしていて目が離せない Vol.3 2019-02-04
- IE6 で YouTube の動画が見れなくなる日も近い? 2009-07-16